勉強活動報告

第8回  九州インプラント研究会歯科衛生士部会学術講演会

日時:平成26年2月16日(日)午前10時~午後3時

場所:熊本城「城彩苑」多目的交流施設2階

くろきデンタルクリニック 歯科衛生士 中島麻耶香 報告レポート くろきデンタルクリニック 中島麻耶香

会員発表

 

里 美香(長崎大学病院)「インプラントのメインテナンス期における音波式電動歯ブラシの効果」

インプラント補綴治療後の良好な状態を長く維持させるためには、インプラントに対し過剰な負担をかけないこと(咬合の管理)、インプラント周囲組織に炎症を起こさないことが大切になります。

インプラント周囲組織の炎症は細菌感染と密接に関連することが報告されており、インプラントメインテナンス期において口腔内を清潔に保つことが重要です。

従来、手用ハブラシによるセルフケアが主に行われてきましたが、インプラント体およびそれに連結される補綴装置の形態は天然歯と大きく異なります。複雑な豊隆やスクリューによる連結部が存在するため、患者自身による清掃が困難です。

そこで、手用ハブラシと比較してプラーク除去効果の高い電動歯ブラシが広く使用されるようになりました。なかでも15Hz~20KHzの周波数を用いる音波式電動歯ブラシは高いプラーク除去効果が報告されており、インプラントの清掃にも応用されつつあります。

しかし、インプラント周囲のプラーク除去効果や、周囲組織に及ぼす影響など、不明な点が多く存在します。

インプラントメインテナンス期における音波式電動歯ブラシの効果を明らかにすることを目的として臨床研究を行いました。(実験群にはDENT EX systema VibratoCare、DENT EX Systema44Mを用いた)

その結果、音波式電動歯ブラシは、短いブラッシング時間で高いプラーク除去効果が得られることが明らかとなり、インプラントメインテナンスの方法として有効である可能性が示唆されました。

 

鏡 舞子(武田歯科医院)「インプラントの上部構造製作における歯科衛生士としての関わり」

インプラント上部構造には、機能性と審美性・清掃性・強度・生体親和性が求められています。

そして、それらを実現するために、上部構造の材料においては従来メタルの鋳造による製作を行っていましたが、CAD/CAMの発達に伴いその利用が増えてきています。それにより当医院においても上部構造の材質が、貴金属系のメタル・メタルボンドクラウンからジルコニア単体・ニケイ酸リチウムセラミックス(e-max)クラウンなどの利用へと変化し、メタルフリーの上部構造を製作しています。また、上部構造維持法も以前はスクリュー固定法やセメント固定法で制作されていましたが、現在はスクリュー固定法と摩擦力を利用したフリクション固定などのセメントレス固定法をおこなっています。

スクリュー固定とはインプラントとかぶせ物を直接スクリュー(ネジ)でとめる方法です。
セメント固定とはインプラントとかぶせ物をセメントで固定する方法で、自分の歯とかぶせものをくっつける方法とほぼ同じです。

 

スクリュー固定

セメントを使わないことで、セメントの取り残しがないことです。
セメントの取り残しがあると歯石と同じように歯周病(インプラント周囲炎)を引き起こす原因になります。
インプラントは自分の歯が歯周病になるよりも歯周病にはなりにくいのですが、一度なってしまうと進行が早いことが特徴です。
インプラントの長期的な失敗の原因の感染=インプラント周囲炎を防ぐにはスクリュー固定の方が優れています。またスクリューで止めているので、スクリューが緩まなければ、かぶせものが取れることはありません。しかし、手で閉める程度の力の締め付けでは、後々緩んできます。
トルクコントロールなどの器具を使用し、規定どおりのトルクで締めることが必要です。(ノーベルバイオケアの場合、アバットメントの種類などにより15~35N)メンテナンスでクリーニングをするときにスクリュー部を緩めればかぶせ物は外れますので、清掃がしやすくなります。欠点は、ネジ穴が存在することです

できるだけ目立たないように白い詰め物でふさぎますが、前歯の表側など見た目が大切な歯では適応できません。

 

セメント固定

ネジ穴が存在しないのできれいで、自然に近いことです。欠点は、セメントが残りやすいことです。特に歯肉の深い位置にインプラントを位置させている場合には、セメントの除去が難しくなります。
インプラントのセメント固定では、通常仮づけのセメントを用います。そのため形態によっては外れやすいこともあります。

ジルコニアセラミッククラウンはメタルボンドの内面の金属の代わりに、ジルコニアを使用したものです。
金属を一切使用しないため、金属が溶け出すことによる歯茎の変色、金属アレルギーなどの心配が無く、強度も強いので、奥歯やブリッジに使用することも可能です。
また、審美的にはオールセラミックスクラウンに多少劣るもののかなり綺麗で、土台の金属(コア)の色が透けるのを防ぐ「マスキング効果」が優れているため、ケースによってはオールセラミックよりも審美的に仕上げることができます。
しかし、まだ新しい素材なので長期的な予後の報告が無い、治療費が高いなどのデメリットがあります。

 

ジルコニア

色が歯に似ているので見た目が良い。マスキング効果に優れているため、土台の金属が透けて見えない。 ジルコニアは割れにくく、ほとんどの部位に使用できる。 金属を一切使用しないので、金属が溶け出すことによる歯茎の変色、金属アレルギーなどの心配がない。 仮止めで様子を見ることができる。
(オールセラミッククラウンは基本的に仮止めができません)欠点は、色調はオールセラミッククラウンに劣る。 歯を削る量が比較的多い。 天然の歯より硬いため、周囲の歯やかみ合う歯を痛めることがある。 長期的予後については、まだはっきりとは分かっていない。 将来的に歯茎が下がって、歯と歯茎の境目が見えてくることがある。 ジルコニア自体が割れることは非常にまれだが、ジルコニアを覆っているセラミック(陶器)の部分が割れることがある。 保険外の治療なので、値段が高い。

理想的なインプラントとは

日常生活で外れることがなく適合が良いこと。

プラーク残留が少ない。

アバットメント、対合歯への影響感がない。

生体親和性が良い。

 

私たち歯科衛生士は、このように日々進化していくインプラントシステムを理解し、対応しなければなりません。上部構造製作においても、アシスタントの技術は治療時間・治療結果・患者負担などに大きく影響します。また、メインテナンスに関して、インプラント上部構造の形態や維持固定法がその行いやすさに影響し、その結果インプラント治療の長期安定を大きく左右させることになります。

 

伊藤 早紀(堀川歯科医院)「糖尿病患者におけるインプラント治療について」

2005年の九州インプラント研究会での調査によると、糖尿病は高血圧に次いで2番目に多いと報告され、糖尿病患者の来院頻度は少なくない。糖尿病はさまざまな全身的合併症を引き起こす可能性があり、インプラント手術時における偶発症や治療後の経過不良に注意する必要があります。

 

糖尿病はインプラント治療の手術から予後に至るまで少なからず影響を及ぼします。術後の感染や創傷治癒不全の可能性はもとより、治療後は血糖値が高くなるとインプラント周囲炎を引き起こすリスクは大きくなるため、血糖値や使用薬剤、年齢、合併症にも着目しなくてはいけません。

糖尿病にかかわらず合併疾患について多く知識を持つことは、偶発症への対応、予防において歯科衛生士として必要なことです。また、インプラント周囲炎と血糖値には相関があるため、メインテナンスとともに、血糖値などの全身状態を把握していくことが重要です。

 

教育講演

 

児玉 利郎(児玉歯科クリニック)「最新の歯周病患者におけるインプラント治療の指針」

インプラント治療は、無歯顎部や部分欠損部の治療における標準的な選択肢になってきています。治療を成功に導くためには、術前の詳細な診断・設計と治療計画が求められ、インプラント埋入部位の手術の適否について軟組織・硬組織の両面から判断するだけでなく、残存歯の歯周組織状態の診断把握も重要と考えられます。

インプラント治療後に発生するトラブル(合併症)は、技術的な問題と生物学的な問題の2つがあり、技術的な問題は、主に術者側の要因に支配され、神経組織の損傷、不適切な付加的処置(骨造成やメンブレンテクニック)、上部構造設計等が考えられます。生物学的な問題は、インプラント周囲に発生する炎症性疾患です。早期には、患者の要因とも関連して創傷治癒不全、早期感染さらに患者の全身疾患等の関連が考えられます。特に、上部構造装着後のインプラント周囲炎と歯周病の関連について着目しなければなりません。

インプラント周囲炎はインプラント治療後の合併症で最も大きな割合を占めていることが報告されています。インプラント周囲炎の特徴は、周囲組織の発赤・腫脹・出血・排膿・歯槽骨吸収であり、細菌感染による炎症性病変であり、さらにオーバーロード等の要因も加わり進行するものと考えられます。しかし、インプラント周囲炎が発生した場合、それに対応するマニュアル化された対処法として累積的防御療法(CIST)が提唱されているが、現状としては十分な治療法が確立されているわけではありません。

そこで、インプラント治療では、術前からメインテナンスに至るまで一貫した炎症性病変の管理、すなわちインプラント周囲だけでなく残存歯の細菌感染のコントロールが重要と考えられます。

 

まとめ

 

歯周外科治療を行っても、その後きちんとした清掃管理が行われてないと、歯茎の状態が改善しないどころか、かえって悪化する危険があります。 特に、手術後間もない時期の歯周組織は脆弱なので、プラークコントロール次第で治癒に影響がでてくることがわかりました。

インプラントの症例も今後増えてくると思うので、インプラントをされる患者さまに、より安心安全なインプラント治療の提供をさせていただき、インプラント治療の成功、インプラントの長期安定を、安心して任せられるよう心がけていきたいと思います。

 

 

 


 

くろきデンタルクリニック 歯科衛生士 大我まり 報告レポート くろきデンタルクリニック 歯科衛生士 大我まり

会員発表

 

1.里 美香さんによる 「インプラントのメインテナンス期における音波式電動歯ブラシの効果」

インプラントのメインテナンスで重要なポイントは2つあり、1つは〝過剰な負担をかけない事"、もう1つは"周囲組織に炎症を起こさないように口腔衛生管理を行う事"である。

また、インプラントは患者のみの清掃が困難であるため、DHによるケアが重要になってくる。音波式歯ブラシによる清掃は、手用よりもプラーク除去効果は期待でき、時間も短縮できるが、DHによる使用方法の指導が不可欠になってくる。また、使う人により当て方・時間に違いが出る事や、使用感について個人差が出やすいので、上手に磨ける方は手用をすすめるなど指導側も患者様に合わせて使い分けるとよい。音波ブラシはインプラントに限らず、パーキンソン病の方や、高齢者にも有効的に使用できる。

 

2.鏡 舞子さんによる インプラント上部構造の制作におけるアシスタントワーク」

インプラントの二次手術後は印象に関わってくるため、"セルフケア・プロフェッショナルケア"がとても重要になってくる。天然歯と比べ、インプラント周囲組織は抵抗が少ないので、インプラント周囲炎を起こしやすい。どうしても上部構造を外さないメンテナンスでは、プラーク付着が目立ってしまうが、毎回上部構造を外すのは困難であるため、よりメインテナンスが重要視されてくる。

 

3.伊藤 早紀さんによる 当院のインプラント患者の全身管理(糖尿病)について」

糖尿病は合併症を引き起こす恐れがある。ヘモグロビン値なども関係し、同じようにプラークコントロールしている健康な方と比べると、何年後などにプラークコントロールよくても排膿などを起こす事もあるので、より気を付けてケアを行う事が大事になってくる。

 

教育講演

 

児玉 利郎先生による「最新の歯周病患者によるインプラント治療の指針」

プラークコントロール不良の方や、見た目は綺麗だがポケット値は深いといった方に共通する点は、いわゆる"歯周病の菌"が口腔内に増えている事が原因である。その菌に対する感受性により、ブラッシング効果も変わってくる。普段DHが行っているPMTCとは、ただ単に歯のクリーニングを行っているのではなく、ポケット内の菌を除去しているという事を理解する必要がある。まずは縁上のプラークをつけないことで、縁下のプラークの熟成を予防するという意味で、PMTCはとても重要である。そういった意味でも、何ヶ月かに一度のメインテナンスは、患者様のプラークコントロールをしていく上で必ず必要になってくる。特にSRPを行った患者様にSRPの効果を最大限に引きだそうとするならば、"処置後2〜3ヶ月の管理(SPT)"が一番大事になってくる。それはポケット内を綺麗にした事で、嫌気性菌が好気性菌に変わり、根面カリエスになりやすくなるためである。また、SPT時に必ず行うプロービングにより出血の有無がわかるため、炎症が再度起きていないか確認がとれる。プロービングではポケット値よりも、出血を診ることのほうが重要視される。ただ圧には注意し、20〜25gもしくは20g以下ぐらいを目安に行う。また6点法で行う場合、近遠心は偶角部に入れがちだが、隣接部にななめに入れる事を心がけるとよい。抜歯後のケアは、コーンクール・綿球・ピンセットを患者様にお渡ししてセルフケアしてもらうのもよい。インプラント部については、コーンクールをつけてウルトラフロスを使うのもよい。また、インプラントは動きがなく、天然歯には動きがあるので、常に咬合に気を配る必要がある。

 

まとめ

 

今回この講演会に出席させていただいた事で、今まで考えていたメインテナンスに対しての考え方が変わりました。メインテナンスというと、カリエスなどの処置後新たなカリエスを作らないようにプラークコントロールを行っていくというような考えで行っていたのが、インプラントの方などでは、インプラントを進めていく中での必要不可欠なサポートであり、一人一人に合わせたメインテナンスの形というものを今後考えていく必要があると思いました。

また、SPTについても初めの1回目の重要さがわかったので、今まで以上にSPT移行時の説明に力を入れ、まずは1回目のSPTに来院していただき、その後も来ていただけるように患者様への意識付けをしていきたいと思います。特に最近はSRP・フラップをされる方が増えてきたので、処置後のプラークコントロールは責任を持って行い、長い目で患者様一人一人の口腔内と向かい合っていきたいと思います。

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